無料で合法に読める本はどこにあるか
日本語で合法かつ無料に読めるものは、多くの人の想像よりずっと豊富です。出所の怪しいサイトに行く必要はありません。
問題は物が少ないことではなく、どこに何があるか知られていないことです。以下は実際に役立つ場所と、それぞれに何を期待してよく、何を期待してはいけないかです。
本が無料になる三つの理由
三つは性質がまったく違うので、混ぜると危険です。
保護期間が満了した場合。 著作権法により、著作権は著作者の死後七十年まで存続します。2018年の改正で五十年から延長されました。
この改正のせいで境界が分かりにくくなっています。改正時点ですでに五十年が経過して消滅していた著作権は復活しませんが、まだ消滅していなかったものは七十年の適用を受けます。青空文庫の収録が一時期止まっていたのはこの事情によります。個別の作品については、公開している側の表示を確認するのが確実です。
著作者や機関が自ら公開した場合。 官公庁の刊行物や学術出版に多くあります。
図書館が貸し出している場合。 期限があり DRM が付きます。「今は無料で読める」であって「自由に配ってよい」ではありません。
知っておくとよい場所
青空文庫
日本語のパブリックドメイン作品の中心です。夏目漱石、芥川龍之介、宮沢賢治、太宰治といった作家の作品が揃っています。
形式は主にテキストと HTML です。テキスト版には独自の記法が入っており、ルビは 漢字《かんじ》、ルビの範囲指定は |、編集者の注記は [#…] という形で書かれています。この記法を解釈しないアプリで開くと、これらの記号がそのまま画面に出ます。壊れているわけではありません。詳しくはこちら。
もう一点、古いファイルは Shift_JIS で保存されていることがあり、そのままでは文字化けします。
国立国会図書館デジタルコレクション
規模は圧倒的です。明治以降の書籍、雑誌、官報などが大量に公開されています。
ただし多くはページを撮影した画像です。目には文字に見えても、ファイルの中にあるのは画素だけで、検索も選択も読み上げもできません。確認は二秒です。指で一文を選んでみてください。理由は PDF の読み上げが効かない件にあります。
保護期間内の資料は送信サービスの登録が要る場合があります。目録に出るのに自宅で開けないのは不具合ではありません。
ウィキソース
ウィキメディアの自由な文庫です。青空文庫より規模は小さいものの、決定的な利点があります。EPUB で書き出せることです。
スマートフォンで読むにはこの形が最も扱いやすく、文字コードがファイル内で宣言されているので文字化けの問題自体が起きません。
プロジェクト・グーテンベルク
英語のパブリックドメインの拠点です。七万点以上、DRM なし、EPUB と MOBI と TXT が揃っています。日本語の作品はごくわずかです。
Standard Ebooks
グーテンベルクの一部を有志が組み直したものです。点数はずっと少ないものの、目次、注、引用符が整えられており、市販の電子書籍に近い読み心地になります。
地域の図書館
公共図書館の電子書籍貸出は正式な貸出で、新刊も入ります。期限と DRM が付き、たいてい専用アプリでの閲覧になります。そこで受け取る .acsm は本ではありません。別途説明しています。
どの形式を選ぶか
選べるなら EPUB です。画面に合わせて組み直されるので、スマートフォンで拡大する必要がありません。
PDF は紙面そのものに意味がある場合に向きます。表、数式、元の版面など。小説を読むには不便ですが、リフロー表示で耐えられる程度にはなります。
TXT は最も軽く、青空文庫の標準形でもあります。目次はなく、古いものは文字コードの手当てが要ることがあります。
全体の比較は形式ガイドに、主要二形式の選択は比較記事にあります。
端末に入れる
最も簡単なのはブラウザでのダウンロードです。ファイルは Downloads に入るので、長押ししてアプリで開くを選びます。
冊数が多ければパソコンでまとめて落として一度に移すほうが速いです。アプリから出たくなければ OPDS カタログを追加する手もあります。
避けるべきもの
- 今年出た本が無料で置かれていれば海賊版です。保護期間が切れているはずがありません。
- 「無料」と言いながら先にカード情報を求める場所は無料ではありません。
- 一つのファイルのために専用ソフトの導入を求めるサイトは避けてください。
定額サービスの無料体験は別の話です。合法ですが無料ではなく、期間が終われば課金が始まります。
どこから始めるか
- 青空文庫で読みたい作品を一つ選び、テキストか HTML で取得します。
- アプリで開き、文字サイズと行間を自分の目に合わせます。
- ルビ記法が気になる場合は、同じ作品をウィキソースの EPUB で探してみてください。
- 明治期以降の雑誌や資料を読みたくなったら国立国会図書館デジタルコレクションへ。